君は天使の事ばかり 1
和葉ちゃん元気?
私は相変わらず元気なんだけど、
最近、新一君と連絡が取れないらしくて、
蘭の元気がないのよね・・・。
良かったら今度、女三人でどこかでパーッと盛り上がって、
蘭を元気づけない?
返信待ってるね。
ラブリー園子
「・・・・・・。」
昨晩、就寝後に入ったらしき、
東京の友人、鈴木園子からのメールを確認し、和葉は通学路で立ちすくんだ。
蘭ちゃん、元気ないんや・・・。
最近、東京に行く機会はなかったが、
蘭から入るメールには、彼女らしい、楽しい日常が綴られていて、
和葉は自分が蘭の境遇を忘れかけていた事に気づき、呆然とした。
・・・ちょお待って、あたしがこの前蘭ちゃんに送ったメールって・・・。
慌てて送信履歴を見ると、そこには蘭に宛てた、
幼なじみのちょっとした失敗を面白おかしく書き綴ったメールがあり、顔が青ざめる。
大切な幼なじみが側におらず、元気のない人間に対し、
自分の幼なじみの話をするなんて・・・。
「よおっ!! 何を朝からアホ面して突っ立っとんねん!!」
ふいに、後頭部に衝撃が走り、
次いでいたずらっぽい笑顔を浮かべた幼なじみが眼前に現れた。
どうやら鞄で頭を叩かれたらしい。
中身はすべて学校に置かれている様な鞄の衝撃は大した事はなく、
普段の和葉なら、すぐさまその手と口で反撃に出る所だが、
今日は倍以上に感じた衝撃のまま、よろよろと近くの電信柱にもたれかかってしまった。
「お、おい、どないしてん。」
「・・・せやねん、あたしはアホやねん・・・・・・。」
くぐもった声で独り言の様に呟き、和葉は何とか体制を立て直すと、
ふらふらとした足取りで学校へと向かった。
後方で平次が何か言っていた様な気がするが、その耳には何も届かなかった。
学校に着いてから、園子に返信を返すのと同時に、和葉は蘭にメールを送ってみた。
自分の行為を詫びては、かえって蘭に気を遣わせるだけだと考え、
何気ない話と、園子と三人で出掛けるとしたらどこが良いと思うか、明るい話題を選んだ。
しかし、いつもならすぐに来る蘭からの返信はなく、
休み時間にももう一度、別の話題を送信してみたが、
放課後を迎えても、携帯が受信らせる事はなかった。
やっぱりあたしがアホ過ぎて、蘭ちゃんに愛想つかされてしもたんやろか。
ううん、蘭ちゃんはそんな子やない。
そんな子やないけど、あたしはそんなええ子にアホな事・・・。
「おっ、おい、和葉、帰るんか?
その・・・お好み焼きでも食ってくか? 奢ったるぞ。」
「おおきに。けど、用があるから遠慮しとくわ・・・。」
自己嫌悪の波と戦いつつ昇降口へ出ると、平次が妙に必死な口調で話しかけて来たが、
ぼんやりとそう答え、和葉は学校を後にした。