その手の先に 3
ともった灯りに一同はようやく落ち着きを取り戻したものの、
和葉の心臓はいまだ早鐘の様に鳴り響いている。
それは決して、急な暗闇に脅えたせいばかりでは無い。
それでもあの時、暗闇の中でしがみついた腕の存在が、
脅えた自分にとって、かなりの助けになった事は確かだった。
そしてあの、幼い頃と同じ、あやす様に背中を叩く仕草は、
やはり自分を落ち着かせようとしての行為だったのだろうか。
しかし、それよりも疑問に感じたのは、
離れていたはずの幼なじみが何故そこにいたのかという点で、
「・・・平次、ずいぶん前の方におったのに・・・。」
気がつくと、和葉は独り言の様にそんな言葉をつぶやいていた。
「・・・アホみたいな叫び声が聞こえたからな。」
その声をしっかりと聞きつけて、平次がぼそりとつぶやく。
「ア、アホみたいって・・・あたしそんな叫んどらんよ!!」
まさか聞こえているとは思わなかったつぶやきを拾われて、
明らかに動揺したものの、反射的に怒って言い返して、
和葉はふと、平次の言葉に、何事かを思い出しかけた。
しかし、
「ほーお、礼も言わんと、可愛げないやっちゃな〜。」
そんな平次の言葉に、そんな思考は一気に吹き飛び、
「礼って・・・つかまっただけやん!!
だ、だいたい平次とは思わんかったし・・・。」
と、しどろもどろで言い返す事で頭の中は精一杯になってしまった。
実際の所、あれはつかまったなどという、可愛らしい行為では無かったが、
無我夢中でしがみついたとはさすがに言えず、
和葉は元々つかまりたかった相手である蘭に、助けを求める様な視線を送った。
「まぁまぁ二人共、あんまり騒いでると二階の皆が変に思うわよ。」
和葉の視線を受けた蘭が間に入ったが、
「俺は別に騒いどらんわ。」
と、平次はにべもない。
「・・・・・・。」
確かにいきり立って大声を上げたのは自分一人だが、
原因を作ったのは明らかにに平次だ。
そんな思いをありありと表情に浮かべつつも、
同情的な苦笑を浮かべる蘭に気兼ねして、和葉は不承不承押し黙った。
「・・・行くぞ。」
いい加減にしろよと、平次だけに見える角度で表情を作り、
コナンはこれまた平次にのみ聞こえる声で、
表面上、一番の司令塔である彼を促した。
「へいへい・・・。」
誰にも聞き取れぬコナンの言葉に、
あてつけがましく地声で返し、平次が先頭へと足を進める。
そうして、「ほんなら、行くで。」と、一行を促す平次に、
和葉は「偉そうに・・・。」と口の中で悪態をつき、
列を組んで歩き出す一行の一番後ろから続こうとしたが、
ふいに、
「和葉。」
と、一番前から振り返った平次に名前を呼ばれて目を見開く。
「な、何?」
「お前、俺の後ろにおれや、また何かあって大声上げられたらかなわんわ。」
そう言って平次は、自分のすぐ後ろにいた竹富との間を空けると、
開いた空間を指さし、和葉をあごで促した。
「な・・・せやからあたし大声なんて・・・!!」
「まぁまぁ、和葉ちゃん。」
まるで子供の面倒を見ているかの様に、そんな事を言い出す平次に、
和葉は抗議の声を上げかけたが、
そんな和葉をいさめる様に蘭は和葉の肩に両手をかけると、
そのまま平次の方へと押しやった。
「・・・・・・。」
ふくれた表情を浮かべつつも、
蘭の手を振り払う訳にも行かず、
和葉は仕方無く、平次の後方へと身を置いた。
そんな騒動を含みつつ、
平次の傍らにはコナン、
真後ろには唇をとがらせた和葉、
その和葉につかまった蘭、
そして最後尾に竹富と、
少し変形した電車ごっこの様な陣形が出来上がる。
「おし。」
そんな陣形を満足げに振り返ると、
平次は進行方向をロウソクの灯りで照らしつつ、再び歩き出した。
そうして、
再び別荘の探索を始める中、
しばらくの間は真後ろで怒りのオーラを発していたものの、
またしばらく経つと脅えた様な気配を見せ始める和葉に、
「怖かったらつかまっとってもええで。」
と、揶揄を含んだ調子で言ってみようかと考え、
平次はすぐさまその考えを打ち消した。
打てば響く様な反応を見せる幼なじみをからかう事は、
彼の特権とも言うべき楽しみではあったのだが、
この時ばかりはつまらないからかいによって相手の意地を誘導し、
更なる特権を逃してはならないと考えたのである。
そんな平次の考えには気づかずに、
和葉は再びやってきた恐怖と自分の中で戦いつつ、
決して目の前の幼なじみには頼るまいと密かな決意を固めるのだが、
もう何年も昔から、心強いと思って来た相手の腕を、
無意識の内につかんでしまうのは、
今からわずか、八秒後の事である。
終わり
さて、そんな訳で、サンデー読んで次週までにどんな妄想出来るかなのコォナァ、
よもや三週連続かましちまうとは自分でも思いませんでしたが、第三回でございます。
43号予想、はいはい妄想ね、いい加減わかってるよっつー事で、
二手にわかれて別荘内を探索する辺り・・・、
すげぇワガママ言わせて頂ければ、
「あのオッサン、こっちの組に入れて正解やったな・・・。」
「ああ・・・一番弱そうだったからな・・・。」
の、平次とコナンの会話のコマと、平次が町長の部屋のドアを空けるコマ、
その間の話だと思って頂けると・・・って、そんな刹那の間にこの妄想を入れろと!!
っつーかそれだけの間に対し、そこまで妄想している自分が怖いです。
話的には最初に後半の部分を妄想したんだけど、
ちょっと短いかなって事で、第二回妄想の際に出て来た、
子供の頃のお化け屋敷の話を織り込んでみたり。
行き当たりばったりに次ぐ行き当たりばったりさ加減がにんともかんとも。
でも子供時代の平和は平和で、それなりに思い入れやこだわりがあったにも関わらず、
これがデ・ピュウ作・・・ううむ。
一応、今のコナンくらいの歳って設定でございます。
あんま子供子供してないけど、少年探偵団もあんなんだし良いよな。
うーん、子供時代の和葉は今より幾分素直な感じなのですが、
平次は結局の所、大人な部分はあるにしろ、
和葉の前でかっこつけつつ素直じゃない性格は同じという・・・。
お気づきかとは思いますが、
和葉を心配して駆けつけた事を隠す言い訳が、十年経っても変わっとらんのです。
駄目だろう。
まぁ、現代の場合、状況的に竹富辺りにしがみつかれたら・・・
っつー不安も含まれ、駆けつけた動きは十倍速。
んで和葉はと言えば、そうと気づかないものの、同じ言葉を受けて、
十年前も自分は叫んでいなかった事を思い出しかけるのですが、
昔より素直じゃないので怒りが先行し、
結局今現在も、叫んだ訳じゃないのに駆けつけてくれた事に気づかないと。
駄目だろう。
んで平次は昔の和葉の反応を憶えてるから、
今は礼も言わない・・・という、あの台詞になる訳です。
今も昔も可愛いと思ってるんだけどね。もうこの和葉狂い!!(あたしがか?)
まぁ、平次がどういう意図で来てくれたかは気づいていないにしろ、
今も昔も和葉にとって平次は心強い存在、っつー事で。
そんな平次をして、うどん屋の姉ちゃんは「小さな騎士さん」などと評しますが、
騎士・・・平次が騎士・・・王子もアレだが、それはそれで大爆笑(ひでぇなおい。)。
言われた時、和葉の意識は別世界をさまよってましたが、まぁ意識の深層に残っていて、
第二回で蘭を守るコナンをそう評したのは、実はこの時の記憶から・・・
って、また行き当たりばったりなこじつけを・・・。
ちなみに「きしさん」でもかなりこっぱなので、
間違っても騎士と書いてナイトと読んだりしないように。
この辺の自分基準は誰にも伝わらないと思いますが、赤面します。
そしてラストは、離しておくと誰にしがみつくかわからないので、
保護者ティックに命令しつつ、和葉を側に置く平次と、
そんな平次に怒りつつも、
結局、怖くなったら無意識に平次の腕をつかんでしまう和葉という事で、
原作の、平次の腕につかまる和葉につに繋がると・・・って図々しすぎ?
いや、第二回で、怖いとか、きちんと意思表示して平次にくっつけない和葉を書いたものの、
こういう、無意識っぽいくっつきは大好きなので・・・。
でも平次もそれを特権と思いつつも、
あまりにも相手が無意識の密着が高まると、特権どころか生殺しって感じよね。
相変わらず片方だけが意識した密着は好きだわ〜。
そうして我慢を強いられ、服部平次ポーカーフェイスの道は出来たのだろうか・・・とね。
所で、潮流の速さはともかく、現在は凪っぽい様子の島にも関わらず、
別荘を襲う、突然の強風・・・
うるせぇ!! 良いんだよ!!(誰も何も言ってない。)
ラヴコメじゃ停電したり雷鳴ったり雪降ったり遭難したり溺れたりは当たり前!!
今更風が吹くくらいでガタガタ抜かすんじゃねぇ!!(だから誰に追いつめられてんだよ。)
ノイローゼ気味に終了。