星空独奏曲 2
ここで会ったのは偶然で。
でも自分の分のヘルメットは用意されていて。
・・・・・・あれ?
バイクはいたって安全運転。
繁華街から遠ざかった夜の道を、振動も少なく、滑る様に走り抜けて行く。
しかし和葉の心臓は、それに反比例するかの様に、段々と鼓動を高めて行った。
噛み合わない、二つの事柄に。
平次が偶然あの場所に来たのなら、何故もう一つのヘルメットを持っていたのだろう。
結果的に良い事ではあったが、それはどう考えても不自然だ。
そうして、疑問の末にたどり着いたのは、一つの答え。
・・・誰かと、おったんかな。
平次のバイクで出掛ける際、必ず渡されるヘルメット。
平次はいくつかのヘルメットを所持しているが、
和葉に渡されるのはいつも同じ、平次が一番の頻度で使用するヘルメットと色違いの物で、
和葉も当たり前の様にこのヘルメットを使用していた。
けれどこれが和葉専用であると、
平次の口から聞かされた事は、和葉の口から聞いた事は、
まだ、ない。
当たり前の様に使用しつつも、
そんな疑問を簡単に口にする事の出来ない自分が情けない。
初めて二人乗りする事になった時に手渡されて。
すごく嬉しくて。
けれど所有権までは言い渡されていないそのヘルメットの、
だいたいの定位置は、機動時の便利さからも服部家の車庫か平次の部屋で、
自宅まで送って貰った時などは、共に自室に直行する事もあったが、
「・・・持っとってもええけど、よそで使うなや。」
などと、何とも言えない表情で念を押された事を思い出す。
その時は、よそで使う機会などあるはずもないのにと、
よくわからない平次の念押しをさらりと流したものだが、
あれは、他の誰か・・・一番使わせたい相手に、
和葉がよそで使う事で傷や汚れのついたヘルメットを使わせない為の念押しだったのだろうか。
・・・そんなら、その人専用にしたらええのに。
強がりつつも、思わず神経を集中させてしまった鼻腔。
特別な香りが運ばれない事に安堵している、情けない自分には、
そんな事を思う資格はなさそうだった。
この背につかまって、この体温を感じて、
見知らぬ夜道を迷う事なく突き進んで行く事を頼もしく思いながら、
平次と共に走って行く。
そんな誰かが自分以外に。
そう考えるだけでどうしようもない切なさが胸をしめつけて来る。
ただの幼なじみで、そんな風に思う資格はないと、
わかっているから余計に辛かった。
つかまる腕が、無意識に強さを増す。