守り手の苦悩 2
「へえーーー!! かっこええなあ、工藤君!!」
蘭を救った、工藤新一の登場と台詞に、和葉が頬を染めて感嘆の声を上げる。
「そう? 格好つけすぎだと思うけど・・・。」
確かに、本音を言えば、あの時の新一は格好良かったと思うが、
あの場に居合わせた女性達の反応を思い出すと、唇が尖ってしまう。
今の和葉の反応そのものだったのだ。
その後、夏野はしどろもどろで何か言った後、
慌ててあの場から去って行ってしまった。
先程の再会はあの時の新一の慇懃無礼な態度を謝るチャンスだったと思うのだが、
今回も夏野はそそくさと去って行ってしまった。
「工藤君、離れてても蘭ちゃんが困っとるの見つけて、駆けつけてくれたんやね。」
「ええっ、たまたまだよ。」
「そんな事あらへんよ。」
優しい瞳を向ける和葉に、蘭は戸惑った瞳を返した。
けれど新一との距離を寂しく感じていた自分を、
少ししでも気にしてくれていたのなら、それは素直に嬉しいと思う。
「きっと工藤君、今も蘭ちゃんの事考えてくれとるよ。」
「そんな事・・・。」
まあ、考えてっけど・・・。
頬を染める蘭の背後で、同様に頬を赤らめつつ、コナンは考える。
しかし、和葉の推理は半分当たりで半分外れだ。
あの時、遠くから蘭の窮地を察したのは言わずもがなだが、
もっと突き詰めれば、見知らぬ男が蘭と接触している事に苛立ち、
近くに行ってみれば、雑誌に写真を載せるなどという、
ふざけた状況にその苛立ちは最高潮のものとなった。
二度とそんな気が起きぬよう、睨みをきかせたつもりだったが、
まだ道端で会って挨拶をする余裕があったのかと、
恐ろしく心の狭い事を考えつつ、夏野の去った方向に視線を走らせる。
そんな事に気を取られていると、隣りの男がガタンと音を立てて荒々しく立ち上がり、
自動販売機の方へ向かって大股で歩き出した。
自分同様、後ろの幼なじみ達の会話は聞こえていただろうから、
多少のからかいは覚悟していたのだが、
からかうどころか無言のまま、不機嫌そうに席を外したその後ろ姿に、
コナンはやや拍子抜けした気分を味わった。
けど、まあ・・・。
こと幼なじみに関しては、
あの男も自分と同じ様な事をしている事が容易に想像出来たので、
自分をからかう事で、藪をつついて蛇が出かねないと不機嫌になったのだろうと、
コナンはその肩を軽くすくめた。
しかし、その推理も和葉同様、半分当たりで半分外れであり、
和葉が自分に向けた賞賛の言葉が不機嫌の原因であるとは、
平成のホームズと謳われた名探偵も、想像する事が出来なかった。
終わり
新蘭寄りの平和。
ダヴルヤキモチは楽しいなあ。
しかし江戸っ子なのに私の書く東京人が胡散臭いのは何故だろう。
これがネックであまり新蘭には挑戦出来ません。
前ジャンルのカップリングはどちらかと言えば新蘭に近かったのになあ。