子供好きの災難 5
さて、その後、遠山和葉の「弟にしたい可愛い男の子ランキング」にて、
江戸川コナンに完膚なきまでの敗北を期した服部平次は、
意気消沈の為か、コナンの遠山家への宿泊の件に関してはぴたりと口をつぐみ、
あれ以上、口を出される事もなくなった和葉は、
改めての上機嫌で連休の準備を進めていたのだが・・・。
「えーっ!! おっちゃんの依頼、のうなってしもたん!?」
最初の電話から三日後、やはり服部家の廊下の一角にて、
蘭からの電話を受けた和葉が残念そうな声を上げる。
「うん、何かね、例の脅迫状の件、突然現れた通りすがりの人が解決してくれたとかでね・・・。」
「と、通りすがりの人が?」
「うん、あまり表沙汰にはしてなかったみたいだから、
その資産家の人もずいぶん驚いてたみたいだけど、とにかくすごい勢いだったんだって。」
「へぇ・・・何なんやろ。」
「さぁ、名前も告げずに行っちゃったとかで、詳しい事はわからないんだけど・・・。」
「名前も言わんかったん? 奇特な人がおるもんやなぁ。」
どちらかと言えば自己主張の激しい幼なじみの名探偵を思いつつ、和葉が感心する。
「だからお父さん、大阪での依頼はなくなっちゃって・・・。
和葉ちゃん、色々相談に乗ってくれたのにごめんね。」
「何言うとんの、そんなん全然かまへんよ!! また何かあったら言うてな?
コナン君泊められんかったのは残念やけど・・・。」
電話口ですまなそうな声を漏らす蘭に、快活に答えてみせた和葉だったが、
楽しみにしていた計画がつぶれてしまった事に対しては、残念そうに眉を下げた。
「ふふふ、コナン君にはまだ言ってなかったんだけど、
実際そんな事になったら、服部君がやきもち妬いちゃうんじゃない?」
どういう訳か日々忙しく飛び回っている同居中の小学生に、
今回の件を言いそびれていた事を思い出すと同時に、
同じ様に日々忙しく飛び回っている和葉の幼なじみの事が連想され、
笑みを含んだ声を受話器に流し込む。
「そうなんよ、平次、自分がコナン君と遊びたいからって、
あたしが泊める言うのに、色々とうるそうて大変やったんやから!!」
「え? あ、うーん・・・。」
からかったつもりが、
実際に小学生相手に嫉妬していたらしい平次と、
平次の嫉妬の方向を曲解しているらしい和葉に対し、
蘭は何と言ったら良いものか、返答につまった。
「どないしたん? あ、でも、平次もここん所は何や事件があったのか、
四六時中飛び回っとって、その事も言わん様になったんやけどな。」
「え・・・・・・。」
結局の所推理ドアホやわ、と、笑ってみせる和葉に対し、
それはもしや・・・と、蘭は考えを巡らせる。
だが、しかし、これは、
言わぬが花、というやつなのだろうか。
自分の想像が当たっていれば、問題の人物はここ数日、並々ならぬ苦闘を強いられて来たはずだ。
知れば和葉は喜ぶかもしれないが、
人の苦労を無にする様な事をしてはいけないという、
生来の性格より導き出された清廉な考えを優先させ、
蘭はしばらく話した後、和葉との電話を終了させた。
おそらくは、電話相手と同じ屋根の下、
彼女の言う所の「キラキラした顔」を浮かべているであろう、
かの名探偵を思いながら・・・。
終わり
青山キャラと言えば特技は妄想!! って事で(そうか?)、
今回は「和葉の前では硬派でキメてる平次の内情はこんなもん」創作を頑張ってみました!!(鬼。)
ああ〜、楽しかった・・・!!(鬼。)
やはりこう、何が何でも自分の思い通りにしたい時は、
大阪の依頼だの、空手の合宿だの、いくらでも話が思いつくものですね!!
更に追求されるなら、あたしは阿笠の足を折ったり、
ポアロを火事にするくらいの事は平気でやってのけます(鬼。)。
でも有り得ない話でもないと思うんだけどなぁ、
平次は自分の家に泊まるのが当たり前だと思ってそうだけど、
そこん所、根底から覆してやりたくなるのが人情っつーか・・・(ないだろ人情。)。
そして来ました妄想ターイム!!
うふふ・・・本当はもっと突っ込んだ妄想も良いかなぁと思ったのですが、
そんな色んな妄想出来る余裕はねぇなって事であんな感じに・・・。
キリ良く就寝まで書いてみましたが、本来なら風呂が限度かな、ハナホン平次。
コナンが性悪なエロガキ、新一が百戦錬磨のジゴロの様に映るのが平次妄想の特徴。
何か、平次は工藤イコール東京もんに、並々ならぬ誤解がある様な気がしてならないあたしです。
今回、知らぬが仏とばかりにコナンは登場せず、何も知らされていない訳ですが、
知ったら知ったでツッコミ所は満載だった事でございましょう。そんな対決も見たい。
そして、服部平次の気苦労を知る由もない遠山和葉・・・。
こちらも書いてて楽しかった・・・!!
コナンに対してはあんな気持ちを抱いていて欲しいなぁという妄想爆発。
平次の怒りを完璧に誤解しつつ、
コナンの事で楽しそうにしたり赤くなったり拗ねてみたり・・・可愛いなぁ!!(声高らかに。)
可愛いけど、可愛いけど、他の男の為・・・っ!!
っつー平次の葛藤を書くのがまた楽しい。本当に鬼だな。
ちなみにタイトルは、和葉の事ではなく、
子供好きだと思われる程、東京の子供を構った為に災難を受ける男の話って事で。
姉弟発言はさておき、ウチの平次は和葉の姉発言が気に食わないので、
あの言葉を言わせる事はかなり悩んだのですが、
他で使うとしたら、すげぇシリアスな場面しか思いつかず、
そんなんウチでは一生ねぇなって事で、結局使用した次第です。
そして、もはや真っ向からの阻止は無理って事で、お馴染み、舞台裏で走る名探偵。
脅迫状を何通か受け取っている大阪の資産家っつー情報だけで探し出す事は可能なのか!?
うっせー!! 和葉の為なら不可能も可能にするんだよ!!(面倒事はキレてやり過ごす。)
いやぁ、でも本当にすんごく楽しく書けました!!
元々、平和は、切ない和葉と、心の底では和葉を想っている平次・・・
みたいなのを妄想しつつ書いていたんだけど、今や・・・。
でも自分の中でしっとり月間とほんわか月間みたいなのがあって、書くのは両方楽しいです。
一気に読んだら統一感なくて疲れるかもしれないけど、結局の所両想いって事で。