子供好きの災難 2
「何やの大声出して・・・。」
突然の平次の大絶叫に、和葉が訳がわからないと言った様に目を見開く。
「ななな何であのボウズが、おまっ、お前ん家に泊まらなあかんねん!!」
「ええやろ別に、蘭ちゃんにうちで預かりたい言うたら、迷惑やなかったらって言うてくれたもん。
おっちゃんが新大阪までコナン君連れて来てくれたら、後はあたしが迎えに行くし。」
おそらくは遠慮したであろう蘭との会話を端的に話す和葉に、
自分が帰って来た際の電話での会話と、上機嫌の真の理由はこの事かと思い当たるが、
今は冷静にそんな事を分析している場合ではない。
「せやから何でお前ん家やねん!! 俺ん家でええやろが!!
そのっ、ほれっ、お前ん家より広いし!!」
「・・・お父ちゃんによう言うとくわ。」
必死に、和葉の家よりも自分の家にコナンを泊まらせる事の利点を考え、口にしてみたが、
ムッとした和葉にそう切り替えされて、顔が一気に青ざめる。
「い、いや、そういう意味やのうて・・・。
そもそも何でやねん!! いっつも俺ん家に泊めとんのやから、俺ん家でええやんけ!!」
まざまざと浮かび上がって来る遠山刑事部長の御尊顔を必死に打ち消しつつ、
これまた必死に会話の軌道を修正する。
すると、何故か和葉は少しうつむいて、
「・・・からやもん。」
と、小さくつぶやいた。
「は?」
「・・・せやから、コナン君と会うといっつも平次が独り占めして、
あたし、あんまりあの子と話した事ないんやもん。
せやから、今度はうちに泊まって貰て、仲良く出来たらなぁって・・・。」
うつむいたまま、顔を赤らめて、両手をもじもじとさせながらそんな事をつぶやく。
なんっっでお前と工藤が仲良うせなあかんねん!!
思わず怒鳴りそうになって、ぎりりと奥歯を噛みしめる。
鼻血が出そうな程可愛い表情でそんな台詞を言われた事が、殊更平次の怒りに拍車をかけた。
しかし、黙り込む平次の態度にあと一押しと考えたのか、
和葉がぱっと顔を上げ、
「それに、今度の連休やったらうちは誰もおらんし、
あたしと二人っきりやったらコナン君もあまり気ぃ使わんでええやろ?」
と、先程の平次同様、自分の家に泊まる事の利点を述べてみせたが、
それが逆鱗への一押しとなってしまった事は、
和葉はもちろんの事ながら、
同時に正気を失ってしまった逆鱗の持ち主も、知る由もない事実である。