垣根の垣根の
何しとんねん、あのアホは・・・。
家に来ると連絡を入れながら、いつまでも現れない和葉を心配して外に出てみれば、
しばらく歩いた路地にて、数人の小学生女子と遊んでいる高校生の女が一人。
「あっ、平次!! あたしなぁ、今ゴム飛びの先生やねん!!」
「・・・・・・。」
人の気も知らずに、というのはこういう事を言うのだろう。
快活に笑う幼なじみの様子に、平次は頬を引きつらせる。
「そう、そこでひねってポン!! 上手やなあ!!」
一生懸命に飛ぶ女の子に対し、嬉しそうに手を叩いてみせる。
「お家にゴムがあったんやけど、遊び方わからんって呼び止められてん。
平次、あんた憶えとる?」
「アーホ、俺はこっちや。
ちょお、手ぇ上げてゴム持ってみ。背伸びしてもええで。」
和葉に言いながら、ゴムを持つ少女達に指導すると、
二人の少女が背伸びをして高く掲げたゴムを、
狭い路地でたいした助走もせず、あっと言う間に軽々と飛び越える。
綺麗で優しいお姉ちゃんとは違い、
格好良いけど何だか怖そうなお兄ちゃんに少し委縮していた少女達から、
わっと歓声が上がった。
「・・・・・・。」
小さくても、女の子は女の子やなあと、
幼なじみを取り巻く少女達の嬉しそうな表情に、和葉は少し困った苦笑いを浮かべる。
「お姉ちゃん、もう一度見せて。」
そんな中、大人しそうな少女が和葉の服の裾を引き、
はにかんだ様子でゴム飛びの再演をねだる。
「ええよー。」
屈託のない笑顔で少女に笑いかけ、再び用意されたゴムへと和葉が向かい、
「ぐー、ぱー、ぐー、ここで飛び上がってー。」
ミニスカートをものともせず、すらりとした足でゴム飛びを繰り広げる。
「・・・・・・!!」
その様子に平次は慌てて周囲を見渡し、次の瞬間には何とも言えない表情で目をそらした。
それに対し、少しませた雰囲気の少女が「お兄ちゃんも大変ね。」と、
訳知り顔で笑ってみせた。
終わり
私の脳内平和は昭和を生きてます・・・。